LODGE MONDO -聞土-

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生産者のいきがいをつくる。道の駅店長インタビュー

2018.11.19 / ちゃやみなみ /

ちゃやみなみです。

先日、道の駅 下賀茂温泉 湯の花への愛を語ってみましたが、店作りやスタッフのみなさんがいきいきと働いているその様子に作り手の愛を感じていました。その愛はどこからやってくるのか?誰がどんなふうに生み出しているのか?その実態を確認するべく、今回道の駅湯の花店長の渡邊純平さんへインタビューをしてきました!

右:店長として働きはじめて4年目。現在30歳の渡邊純平さん
左:ちゃやみなみ

道の駅が、地域を循環させる出発点に


「よろしくお願いします!こんな見ず知らずの私のインタビュー依頼を快く受け入れてくださりありがとうございます!朝の10時から地元の方が大勢買い物していますね 。」


「素敵な記事をありがとうございました。そうですね、感覚的には7割地元客、3割それ以外ですね。平日はほとんど地元の方が利用しています。」


「今日はこれほど地元に愛されているこの道の駅の実態と、渡邊さん自身のことも根掘り葉掘り聞く気概で来ました。早速なんですが、湯の花で働くまでの経緯を教えてもらえますか?」


「大学卒業後、三島にあるIT企業の営業として働いていました。田舎って、長男は実家に帰って家を継ぐっていう風習がなんとなくありますよね。それで、兄は地元に帰らないというんで、じゃあ自分が帰りたいということで、地元に帰ることにしたんです。」


「営業マンだったんですね!その雰囲気出てます。」


「地元に帰ると決まってから、自分には何ができるかと考えていました。それからも仕事でいろいろな営業先を回っているなかで、当時の湯の花の理事長と毎日のように顔を合わせるようになったんです。他愛もない話をする中で、湯の花の地域に対する取り組みや想いに触れ、自分がやりたかったことはこういうことなのではないかと。そして店長として雇ってくれないかと自分から言い出しました。」


「いきなり店長として入ったんですか。」


「湯の花には当時まで店長がいなかったんです。」


「渡邊さんの共感した、湯の花の想いとはどういったものなんでしょうか?」


「地域を元気にするとはどういうことか。お金だけではないやりがいや生きがいも作っていく。そんな取り組みや姿勢に共感して、自分ならなにができるだろうと考えました。」


「営業マンから湯の花の店長となって、どうですか?」


「一般的な小売業との圧倒的な違いは、生産者さんの顔が直接みえることですね。いろいろなことを話せるし、パワーを貰えるし。もしかしたらパワーもあげられているかもしれないし。」

湯の花が目指すのは「生産者ファースト」

生産者を第一に考えて売上をきちんと出してあげることで、地域のお金の循環を良くする。これが渡邊さんの考える生産者ファーストです。
湯の花には、野菜・果物や工芸品、鮮魚など合わせて現在約550人もの生産者が登録をしています。昔は登録したっきりしばらく納品が無い方も合わせての人数だったそうですが、現在は一定期間販売の無い方は登録をリセットするようにしているため、ほとんどがアクティブな登録者だそう。


「道の駅は生産者あっての場所です。いかに作ったものを売れ余りなく売って、これだけ売れたからじゃあ来年はもっと頑張ろう、とやりがいを持ってもらえるかが大切です。そうして商品がしっかり売れることで、地域内のお金の循環を良くすることも目的の一つです。」


「お客様第一はよく聞きますけど、生産者第一はあまり聞かないですね。」


「もちろん売上げが出ることが前提なのでお客様も大切ですが、生産者も同じくらい大切です。生産者1人1人に対して個別のフォローにも力を入れていて、1日5回の売上速報メールを送り在庫補充の予測がたてられる仕組みを実施したり、野菜の値下げ販売をしています。実は、野菜の値下げは道の駅の中では珍しい取り組みです。販売している野菜の売れ残りは基本的には引取りなんですが、引き取ってもらう量を少しでも少なくできるよう、引取り前に値下げ交渉を行っています。


「商品チェックにすごく手間もかかるだろうし、交渉にも労力がいるのに。」


「生産者との信頼関係があるからこそ、僕たちはそういう話もできているかなと思っています。すぐに引取ってもらうことも可能なんですが、丁寧にやることである程度の評価をもらっているのかなと感じますし、大切にしたいと思いますね。


スーパーの見切り品ほど味が落ちているわけでもないので、私は普通に買っています!

更に、もともとは余剰していたものを湯の花に持ち込むことで地域の売上にも貢献しているんだそう。


「漁で狙った魚以外がかかると、知り合いにあげるか、自分で食べるか、場合によっては捨ててしまっています。高級魚ほど格別おいしいわけではないかもしれませんが、普段食べる分には十分。それを山や畑の仕事をしている人は喜んで買うんです。逆に、海の仕事をしている人は、畑をやっている人だと捨ててしまう野菜や果物を喜んで買うんです。その両方をつなぐ部分に湯の花がなれたら良いのかなと思っています。」


「お互い無駄にしていたものがマッチングしてるんですね!そういう場所を必要としている地域たくさんありそう」

生産者のやりがいを作ることで、町の幸福度を上げる

やりがいは、商品を作って売ることだけではありません。道の駅は生産者の方にとって商品を作って売るためだけの場所ではなく、生産者同士のつながりや、商品を納品しにくる一連の流れが生活の中に組み込まれて、生きがいや楽しみになっているという。


「営業時間前、毎朝生産者の人たちは商品を納品しに道の駅にやってくるんですが、ついでに喫茶スペースでお茶をしておしゃべりするのが日課なんです。ここに来ること自体が楽しみになって、生きがいになっているんです。」


「めちゃくちゃ素敵な風景ですね。」


「つかまるとなかなか動けません(笑)」


「間違いないですね。」


「生産者の満足度は今後もガンガン上げていきたい思っています。生産者の方は平均年齢70歳以上なんです。個々人の所得が少しずつでも上がれば、孫にお小遣いをあげられたり、ちょっと趣味のものが買えたりしますよね。そうしてここに関わった時間が良いものだったな、
もっと言えば生きていてよかったな、とまで思ってもらえたらいいですよね(笑)」

この話を聞いていたら数日後にこんな記事が
おばあちゃんマネーの子どもたち(ジモコロ)
フリーペーパー「鶴と亀」の小林くんと、「やってこ!シンカイ」店長のナカノヒトミさんへのインタビューを通して、おばあちゃんと孫の関係における「お小遣い」の存在について切り込んでいます。


「気になっていたんですが、店内にたくさん手作りのポップがありますよね。めずらしい野菜や果物の説明、時にはレシピを紹介も。喫茶コーナーのメニューはいつも入れ替わっていて、窓口の方が丁寧に季節のメニューを説明してくれるんですが、生産者だけでなくスタッフのやりがいも充実している様子が感じられます。」


働くスタッフのパワーは本当にすごいです。自分たちでどんどん工夫をして店作りに参加してくれています。喫茶コーナーのメニューは、いつのまにか僕の知らないメニューが追加されています(笑)」


「スタッフが楽しそうに働いていると、その場全体が楽しく感じられますよね。」


「地域の人のやりがいや生きがいを作る意味では、必ずしも今の事業である必要はないので、頭の中ではそうなってもいいように準備をしていますね。身体はひとつしかないんで、今すぐには動けませんが(笑)」

町単位ではなく、南伊豆エリア全体を盛り上げていきたい


「僕は河津町出身・河津町在住で、車で40分ほどかけて南伊豆の職場まで通っています。」


「結構かかりますね。違う町で働くことを、いろいろ言われませんでしたか?」


「就任当時はどうして河津の人が南伊豆の店長に?と言われることもありました。」


「多くの地方では何故か行政の決めた町単位だけで物事を考えがちですよね。河津も南伊豆も外から見ればあくまで伊豆半島なのに。」


「そうなんです。僕としては、南伊豆エリア、いわゆる賀茂(かも)地区の1市5町は1つの地域として考えています。湯の花も、以前は南伊豆以外の商品の取り扱いは基本的にはNGだったんです。ただ、その考え方では今後10年20年とたつとどうなっていくかわからない。南伊豆町がなくなっているかもしれないし、河津町も同様。自分の裁量だけで決定はできないですが、地域外の商品も自分を介して組織全体に話を回して検討するようにしています。」


「いろんな地域の商品が並ぶように、渡邊さんはバイヤー的な動きもしているんですか?」


「基本的にはまず南伊豆のものを置くようにしているので、あまりバイヤー的な動きはしていません。現状では、南伊豆外のものでは魅力的なものを最低限取り扱う程度です。ただ、ここをもっと魅力的な場所にしていく意味でも要望の多い鮮魚は、最近取り扱いも始めていて、これからもっと拡大していきたいと考えています。南伊豆は漁獲量は多いですが、地元へはあまり出回っていないのが現状です。南伊豆の魚をなるべく取り扱うようにしていますが、西伊豆で名産のイカがあがればイカを置くこともあります。西伊豆のイカは人気があって、それを目当てに来店するお客様もいますね。


「やはり地元に出回っていないんですね…!魚が入ると私も買いに来ます。」


南伊豆には電車も通っていないので、自分のように車で40分以上もかけて道の駅に来てもらうには、どうしたらいいのかまだまだ模索中です。生産者の平均年齢が70歳を超えている中で、人口の減少に対応しながら、もっと若い世代の方にも利用して貰える場所にしたいですね。これからも居心地の良い場所を作っていきたいと思っています。」


「今、急に耳に入ってきたんですが、いつも店内に流れていた渋い昭和歌謡曲は、生産者の世代を考えて流していた曲だったんですね。」

終わりに

道の駅 下賀茂温泉 湯の花のさらなる魅力、伝わったでしょうか?

今回のインタビューを通して見えてきたのは、湯の花を通して地方都市の未来を考える店長の情熱でした。

町の幸福度をあげるために、生産者ファーストの場所を作る。
心地よく過ごしてもらうために、小さな気遣いを丁寧に実践する。
そうしてできた信頼関係をつないでいった先に、「地域に愛される道の駅」がありました。

「”土”地の声を”聞”く」LODGE MONDO -聞土-とアプローチ方法は違っても、それぞれ抱いている危機感と未来への情熱は近くにあるのだなと。伊豆に来てからというもの友達のできない私には、こんな話のできる渡邊さんがとても貴重で尊い存在になりました。
そしてこの世代で小さくても伊豆に波紋を起こせたら・・・!なんて私にも野望の芽が出てきたのでした。

この記事を書いた人

ちゃやみなみ minami chaya

神奈川県相模原市出身。東京で自転車イベントの企画制作会社を歴て結婚を機に下田に移住。現在は群馬県みなかみ町在住。 フリーのデザイナー、兼各地の賑やかし担当。 無駄を愛し、無駄を作り、無駄で世界を満たしたい。 日本パイ投げ協会パイ長。毎月8日は餃子の日。

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