伊豆に移住した都民meets古民家 その参「曖昧にMeマインド」
2022.11.16 / /大黒柱。
これまで僕は比喩的な側面でしか、
あまり考えたことがありませんでした。
生まれ育った北海道には、
100年を超えるような古民家はほぼ無く積雪の関係か2×4住宅が主流で、
大黒柱を有するような日本家屋にはなじみが薄かったんです。
前回の記事にも書かせていただいたとおり、
これまで民家では見かけたことのないクラスの、
立派なケヤキの大黒柱がここにはありました。
ケヤキの高級木材たるゆえんの一つが、
ノコギリの刃もこぼれるほどの固さ、丈夫さと言われているそうですし、
この大黒柱の風体をもってするなら、多少の湿気やシロアリをもってしても、
床下部分が半分くらい腐れていようと、強度的には問題ないでしょうよと思っておりました。
が、しかしです。
床板を剥がして目にしたものは、この大穴。
「ガビーン」
実際に使うの初めてかもくらいのワードが思わず口からこぼれました。
とりあえず屋外に緊急脱出し、冷静を取り戻すべく一服。
恐る恐る振り返ってみるも当然、
古民家は何事もなかったように佇んでいます。
いかに支出を抑えつつ居場所を確保するか、
古民家と僕の、仁義なき戦いはこうして、
派手めに火ぶたが切って落とされたのでした。
湿気、シロアリ恐るべし。
これまで人生の大半を梅雨が無いで有名なHOKKAIDOと、
エアーのコンディショニングされたコンクリートジャングルで過ごしてきたことを、
思い知らされるほどの威力なんですねと。
しばらく思い悩んだ後、床は作らずに生きて行くことにしました。
だってこの状態から、湿気たちと上手く付き合える床上生活を考えるとしたなら、
対策するのに費用と期間がかさみ過ぎとなるでしょう。
いかにローコストで住まいを確保するか…導き出した答えは、土間土間生活です。
土間の隣も土間。全部土間(コンクリートの)。
そして腐った柱には、土間と柱の無事な部分との間に丸太なんかをぶち込みましょうと。
一般住宅では布基礎にあたる部分は、
コンクリート土間から立ち上がった、モルタル石垣にしました。
天井も抜いた部分などにいたっては地表面レベルから屋根裏までですから、
相当な開放感のある空間が生まれております。
賛否両論はあると思うのですが、数か月暮らして不便は感じてないというか、快適です。
「靴を脱がないと、家に帰った気がしないじゃないか」
僕はむしろそこが個人的には気に入っていて、
ここは中なのか外なのか…曖昧であることの心地良さ、愉しさ。
最近では玄関先に、裏山から伐り出した丸太柱をぶっ立て、
それに物置から発掘されたビックなシートを被せ、
巨大パラソル?的なものを作ってしまったものだから、
なおさら判りにくくなった気がしておりまする。
NO BORDER? シームレス?
そんな心地良さもあるかなと。
手が滑って飲み物の入ったグラスを…
ガシャンばちゃーん!
「すみません!」
「あ、大丈夫大丈夫、さっと掃いて拭けば問題無いしー
それより、怪我無かった?」
外か内か曖昧なコンクリート土間なら、
こんなセリフが言えてしまう確率も上がるのです。
ユルめの部屋履きに履き替えれば、それなりに帰って来た感を感じられますし、
この家に来て動物達と暮らし始めておりますが、
いわゆる普通の暮らしより、目くじらが圧倒的に立ちにくいかと。
座布団正座コンビとは無縁になりますが、今のところ未練はありません。
地表からの湿気をコンクリートで遮り、通気によって湿気をこもらせない。
床板と地面に挟まれた閉ざされた空間の腐れが、
半端ではないのを目の当たりにしたゆえの結論でした。
ただでさえ隙間だらけの土壁古民家ですから通気は否が応でも、できてますし。
もちろん、布基礎を回して床下強制換気などを行えば、
あるいは高床式に作り変えられたら、
床のある素敵ライフがここでも送れるとは思ったのですが。
それにはお金が…ですし、そこまで必要性も感じなかったと言いますか。
コンクリートは手練りで、表面はモルタル素人仕上げ。
しまいには敷地を流れる湧き水の通るU字溝に溜った砂利や砂を使えば、コストは腰の痛みとセメント代のみ。
そんなこんなで夏から秋へ土間土間ライフを、
満喫させていただいた先にそびえる魔の季節、冬。
すでに朝晩は薪ストーブを抱く日々、
どんな厳しい戦いになることやら…
それでは今回はこのへんで。
お体ご自愛下さいませ。