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伊豆に移住した都民meets古民家 その弐「破壊と“想像”」

2022.9.6 / michi /

古民家に住むようになり、

2カ月近く経ちます。

 

結果的には約3か月の作業期間で、

家の半分を自らの手でリフォーム?して、

おかげさまでなんとか生活できています。

 

 

前回の記事の末尾、Tさんを…

小走りで追いかけた春の日からは5か月。

 

あの日、Tさんに追いつき、

濃厚なカビの香りに出迎えられて勝手口から中に入ると、

薄暗い室内へ進んで行くTさんが振り返り、

 

「床が抜けるかもしれない、気を付けてよ」

「今、電気点けてやるから」

 

レトロなブレーカーにしっかり電流は届いており、

懐かしいような幾つもの昭和の蛍光照明に照らされて、

古民家の内部が隅々まで浮かびあがりました。

 

柱や囲炉裏を含むあらゆるモノたちの時が、

主を失ったその日からピッタリと止まり、

湿気と埃の海に朽ちていく最中…

腐海に沈みかけた家。

 

[パッと見は荒廃感も少ない古民家内部]

 

 

「これはキビシイかもな…」

 

パッと見回しただけでは気づきませんでしたが、

壁であるはずのところから外の緑が見えていたり、

ベットは床下に沈没しかけていたり。

 

帰りの車中、Tさんは、

 

「ビックリしたでしょー」

「私もビックリしたものー」

「あんなになってるとまでは思わなかったものー」

 

繰り返し呟いて帰宅されました。

 

 

正直、建物の印象で言うなれば、

古民家というよりも廃墟でした。

 

しかし、家屋の状況を抜いて考えるなら、

抜群の環境だと思いました。

 

 

[敷地前の清流を眺め、思い出にふけるTさん]

 

 

 

移住先輩の中に大工さんが数名おり、

そのうちのお二方にアポが取れ、

現地で廃墟物件を見ていただきました。

 

「修復するにはけっこう手遅れ気味だけど、

できなくはないんじゃない?」

 

「難しいとは思うけど、

自分の住む所を自分で何とかするって楽しいからね」

 

そんなコメントを頂戴しました。

 

2人共、最初の記事に書かせていただいたように、

目指せ百姓キャンペーンの中で、

一緒に働かせていただいたことがあり、

ある程度僕の、技量とまでは言えませんが、

何ができそうか知ってくださっている方々でした。

 

ゆえにポジティブにコメントを受け取ると、

やってみたい方に気持ちは傾きましたが、

二の足、三の足を踏みたい程に、

古民家の廃墟感は想像以上だったのです。

 

 

「やれんのか?」

 

 

自問の日々を他の物件も探しながら過ごすこと数日。

同居するパートナーにも見てもらうことに。

 

「無理でしょ」くらいは言われて、

話し合って決める覚悟でいましたが、

意外にパートナーの焦点も、

周辺環境の良さに合っていました。

 

「あれほどの環境には、この後何年探しても出会えそうにないよね」

 

前の記事に書かせていただいた、

「自分たちのキーワード」のほぼ全てが、

ここなら叶えられそうなポテンシャルがある、

そんな風に彼女も感じていたのです。

 

とはいえ、

「やれんのか?」です。

 

大工やその他の業者さんにお願いできる、

資力はありませんでしたので、

ほぼ自分で、です。

 

踏ん切りも半ばに、

Tさんに、この物件に興味があることを伝えました。

 

「えっ!?やれそう?」

 

今回はご縁が無かったと言われる覚悟でいたようで、

Tさんは腰を抜かさんばかりに驚いてくれ、

 

「何年かかってもいいんだからさ、自分たちでお金かかんないようにやんなー」

 

晴れやかな顔でした。

 

恐らくTさんの胸中では、

放置したままの物件があることが、

今まで常に引っ掛かっていたのでしょう。

 

「やってみたいですが、自信はありません」

 

そう正直に伝え、どうやったら住めるかを、

真剣に考えはじめました。

 

[当時Tさん所有だったハナコを連れ、古民家前にて]

 

まだ東京にいた頃のこと、

生き方同様、

住まいについても趣向の変化がありました。

 

都会に広いテラスや吹き抜けを有するような、

そんな住まいも素敵だと思っていますが、

 

「シンプルな生き方」、「ミニマリズム」という概念や、

それに付随して「タイニーハウス」寄りの情報に、

多く触れるように変わっていました。

 

実は僕が伊豆に移住するにあたって、

移住諸先輩たちへと繋がる人脈の起点となったのは、

天城カントリー工房という、

タイニーハウスの製作販売を手掛ける会社の、

ファクトリーを訪ねたところからでした。

 

そんな流れもあり、

究極のタイニーハウス、

「小屋」に暮らすこともアリだなと、

 

前回の記事に書かせていただいた通り、

自分たちの気に入る環境に立つ良物件を見つけることは、

本当に都市伝説なみに難しそうではあるし、

 

まず、お気に入りの環境を見つけ、

そこに小屋、場合によってはテントを立てて、

すべてはそこからで良いじゃないか。

 

そんな想像もすでに巡らせてはいました。

 

奇しくもTさんの物件と出会った頃、

代表松本氏からCabin Pornシリーズの本をお借りしており、

 

内容は砂漠のど真ん中から極地、地中から樹上まで、

お気に入り様々な場所に小屋を建て、

思い思いの暮らしを謳歌している人々の姿でした。

 

彼らの生き様も後押しとなり、

ついに決断の時が来ました。

 

「山小屋として住もう」

 

 

古民家を元通りの姿に復元し、

小奇麗に住まうことができるなら、

それがベストなのでしょう。

 

しかし、その路線を突き進むには、

技術も、資金も、気力も、時間も。

すべて足りないのは明らかです。

 

だがしかし、

広い古民家の一角を柱と屋根、

いわば極限まで削ぎ落して、

 

その中に小屋を作る感覚で、

居場所を構築することなら…

 

「やれんじゃないのか?」

 

最悪、屋根の下にテント張ったら良いじゃん。

できるまで。

 

職場の同僚ISHIIくんに手伝ってもらい、

腐った畳の撤去を始めました。

 

 

次第に明らかになっていく、

廃墟古民家の現状。

 

腐った畳の下の床板はモチのロンで腐っており、

その下の根太や大引に至るまで全滅。

 

 

破壊神の化身となり、ひたすらにぶっ壊し!

撤去した廃材を庭にうず高く積み上げる日々。

 

その手がピタリと止まったのは、

大黒柱の下部が床下から現れ、

そこを覗き込んだ時です。

 

「ほぼ無いじゃん…」

 

 

黒光りして目を引くぶっといケヤキの大黒柱は、

想像の斜め上を行く斬新な朽ち果て方をしていたのです。

(つづく)

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