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ニッポン、カヤック釣り紀行 【太平洋・高知編】

2021.4.29 / 松本潤一郎 /カヤックフィッシング

あたらしい旅をはじめることにした。

「ニッポン、カヤック釣り紀行」

いまだ、ぐずぐずと燻り続けていきそうな気配のコロナ禍。

外の国へ出ることもまだ難しそうであれば、水面(みなも)から日本の土地の風景を見、釣りをして体感する旅をはじめてみようと思う。

「紀行」という表現にしたのは、この旅がカヤックに乗ることや釣りをすることだけを目的としていないから。

かんたんに言うと、野田知佑開高健を足して2で割ってソーダ水で薄めたやつだね。

 

最近まで、日本は小さく狭い国だと思っていた。

西伊豆に移り住んでくる前は海外をバックパックやオートバイで旅していたので余計にそう感じていたけれど、伊豆に住み、カヤックで海に出て釣りをするようになってから急に「ニッポン」という国が自分の中で拡張してきた。

ニッポンは地面がある土地の周りを海に囲まれた島国で、南北に3,000㎞に渡って伸びている。

南米をオートバイで旅していた時、チリの細長さには圧倒されてしまったけれど、その全長が4,000㎞だと知るとなかなかにニッポンも細長い…!

それにチリは南北だけなのに対しニッポンは東西南北に湾曲しながら伸びていて、大きめの島4つ、小さめの島たくさんで構成されている。

この形状も、よくよく考えてみるととても不思議な造形だ。

南米を旅していた時も釣り竿をオートバイに括り付けて川や海で釣りをしていたけれど、魚や水辺の生態系の多様性でいったらニッポンの方が断然に奥深い。

 

カヤックやカヌーとはそもそもが狩猟の道具だった。

そんな古からある人力で水の上を進む乗り物を使ってニッポンのあちこちに出かけて行き、まだ知らない海や川、湖などでその土地に棲む魚を釣る。

それは大きな魚を釣ったりすることが目的ではなく、釣りという行為とカヤックという乗り物からその土地を感じる旅。

この要素だけでもニッポンで無限の旅が作れそうだと考え始めてからいてもたってもいられなくなった。

 

数年前から誕生日は誰にも会わず、家族とも離れてひとりで過ごす、という誕生日プレゼントをもらうことにしている。

(人からプレゼントを貰うのが嫌い。だいたい自分に必要の無い、要らない物の方が多いから)

この「誕生日にひとり旅」のタイミングで自分が大好きな土地、四国へ。

カヤックを車のルーフに積んで出かけて行くことにした。

 

西伊豆から片道750㎞を一気に移動してたどり着いた高知市内。

はりまや橋の近くの居酒屋にラストオーダーぎりぎりに滑り込み、カツオの藁焼きを塩とポン酢で食べると「高知へ来た~」と実感する。

これだけ流通が発達したに、なんで高知のカツオだけこうも別格にうまいのだろう…

 

 

実は、海外からの長い旅から帰国した直後に、いちばん移住したいと考えていた土地が高知だった。

高知県内に仕事も仮決まりまでしていたのだけれど、それが一旦白紙になってしまい、それならばと第2候補地としてあった西伊豆へ来た。

オートバイの免許が取れる16歳から幾度となく来ていた高知という土地は、伊豆の山と海と川とを3割増して力強くしたような土地、そして、人も強い…!

閉店近くなのに快く良いつまみを的確に出してくれ、よく管理された生ビールを提供してくれたこのお店。また行きたい。

 

 

翌日。ゆっくりと行動を開始して筏釣りで有名な浦ノ内へ向かう。

太平洋に面している高知だけれど、浦ノ内の湾は奥まっていて内海のようになっている。

少し風が強く吹く予報だったので、はじめての土地でカヤックを浮かべるにはちょうど良さそうだった。

初遠征カヤック釣り旅なのに、無謀にもこの湾に棲むアカメを狙ってみる。

 

 

結論から言ってしまうと全くダメだったw

アカメが夜行性ってのもあるかもしれないけれど、下準備とか全くしないでそんな簡単にいくはずがないよな。

ガーミンの魚群探知機を見ながら湾の中の変化を探すも、流れこんでいる河川は浅すぎてカヤックじゃ入り込めないし、海底変化もほとんどない遠浅の海というか湖のような湾内でどうやってやるかイメージがつかなかった。

それでも地元の渡船屋が浮かべている筏の下にはクロダイがうようよと見えるし、時折スズキか、もしかするとアカメのような大きな影が横切る。

一度、使われていない筏の近くで、魚探に鮮明で大きな反応があったのでルアーを落とし込むと、落としたルアーと一緒に魚も潜っていったけれど食わず(魚探だとリアルに見えるのです)。

日中は筏に付いている魚を狙うしかなさそうだったが、渡船屋が浮かべている筏や生け簀の周りでカヤックで釣りするのは何か違うし、それをやるならちゃんとお金を払って筏に乗らせてもらった方が楽しいだろう。

 

 

釣りは早めに切り上げて湾内を散策。

春の四国の風を穏やかな海の上で過ごすだけでも素晴らしい時間なのだ。

 

陸にあがり、今日の宿を探す。

車にはテントを積んできているけれど、少年時代から散々テント泊をしたせいか、今では手頃な宿があれば宿に泊まるスタイルになっていった。

昔は自分の持っているお金をすべて旅に注ぎこんでいたので、なるべく長い時間その土地に留まり、なるべく長い時間、旅を続けるための手段としてキャンプを選択していた。

野に眠る夜もいいけれど、知らない町の中で泊まるのもおもしろい。

土佐市のビジネスホテルを今晩の寝床とし、この日の晩もカツオのたたきとこしあぶらの天ぷらで高知の『産土』を胃に叩き込む。

 

 

翌日は須崎方面へ移動。

はじめて高知県の外洋側で海にカヤックで出る。

この日は季節にはだいぶ早い台風が沖縄諸島にあったので、予想通り高知にもうねりが入っていた。

伊豆半島の西側でも、沖縄付近に台風があるとうねりが入ってくるのはここと同じ。

ここ浜は南東を向いていて南側にある半島がうねりを防いでくれそうだ。

こんな旅を続けて行くと海と地形の状況を読んでいくのが鍛えられそう。

 

キャンプ場にもなっている小鎌田の浜からカヤックを出す。

海の様子を観察していると散歩をしていたひとりのおじいさんが自分の伊豆ナンバーの車を見て、

「下田から来たのかい?昔はカッター船に乗りによお行っちょったがな~。電車がまだ通る前の頃さ。」

伊豆急が開通する前だって。いったい何年前なんだ…

黒潮に乗って、人も土佐と伊豆とを移動していたんだな。

海は、繋がっている。

 

 

湾内には大きなうねりは入って来ていない。

イワシの群れもたくさん接岸していて良い雰囲気。

少し沖まで漕ぎ出し、岬近くの根の周りにいつもパイロットルアーとして使っているメタルマル40を落とし込むとすぐに力強い魚たちがかかる。

 

 

クロダイにワラサ。クロダイは西日本だと良くルアーにかかるみたい。伊豆では一度もルアーで釣れたことがないからとても新鮮!

しかも、何か顔のつくりが違う?東のクロダイよりも顔が尖っている様に見える。

種類がちがうのかな?

 

 

はっきりとした潮目が現れたのでその潮目に沿ってカヤックを流すと得体のしれない魚がかかった。

両手でロッドを持ち、竿尻を体に押し当てていないと耐えられない。

カヤックはあっと言う間に数十メートル引っ張られ、リールを巻き上げることもできない。

大きなシイラがかかってもこんなには引っ張れたことはない。

いきなり、これは、さすが高知!

メーターオーバーのアカメがかかっても大丈夫なように、いつも伊豆で釣りをしているラインよりだいぶ太いPE3号とショックリーダー60lbの組み合わせだったので根に潜られないようにすれば取れるはず。カヤックを大きなウキに見立てて魚を疲れさせるしかない。

何度目か引き回された後で少しずつ出されたラインを巻き取れるようになって来たが、そこでスッと軽くなってフックが外されてしまった…

 

 

どんな魚か見てみたかったけれど、はじめての海で良い体験ができて満足したので1時間ちょっとで陸に上がり久礼の町を歩く。

久礼大正町市場が有名だけれど、気に入ったのは海を真正面に見据える久礼八幡宮。

 

 

神社にカツオというのがさすが土佐の国。

カツオは土佐のカムイなんだ。

 

 

一方通行の厄ぬけ石。

 

 

広々とした境内の横にはちょっとした遊具が置いてある公園もあり、双子の子どもを連れた家族が遊んでいた。

うちは子どもが4人いるので表に解き放つ「放牧ポイント」を探しておくことも旅の中の大事な要素。

次回はカヤックを出した小鎌田の浜にテントを張り、家族でキャンプ泊しながら長逗留したくなる町だった。

 

翌日、瀬戸内海でカヤックを浮かべるために愛媛へ移動。

ニッポン、カヤック釣り紀行 【瀬戸内海 愛媛編】につづきます。

 

 

この記事を書いた人

松本潤一郎 junichiro matsumoto

株式会社 BASE TRES 代表
西伊豆の山を【まわす】BASE TRESのシャチョー。幼稚園を中退する輝かしい学歴からスタートし、中学はもちろん不登校。修学旅行の積立金を返してもらったお金でテントを買い、一人旅へ出掛けるようになり早々とメインストリームからドロップアウト。
17歳にはヒマラヤのトレイルを歩きはじめ、その後カラコルムやアンデスへ。南米大陸をオートバイで走りまわったあと西伊豆へ移住。ギターを弾いて飲み代を稼ぐのがライフワーク。

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