山を肴に!Let’s Hike and Drunk
2022.2.5 / /モンドトリップ人はなぜ山に登るのか。
景色、達成感、限界への挑戦など、登る人の数だけ理由があるでしょう。
あなたはどうです?そこのあなた、赤いセーターの、そうあなたです。
山ご飯ですか、いいですねぇ。ほう燻製。山の上で、ベーコン作って、かぶりつく!違う?カルボナーラ!いいですね〜。
では隣のあなたは?あなたですよ、反対側は壁ですからね。
なるほど道具がお好きなんですね。色んな道具を実際に山で試して、それを動画にしてる、楽しそうですねぇ。
やはり十人十色、いろんな楽しみ方がありますね。
さてさてまだ飲み物来てない方いますか?あ、まだ来てない。え?熱燗頼んだから時間かかるかも?いきなり飛ばしますね〜。
ではもう少し話しましょうか。
イギリスの登山家『ジョージ・マロニー』が山に登る理由を聞かれ「そこに(山が)あるから」と答えたのは有名な話。
この言葉は「山は、人生に似ている。目先の小さな目的に捉われず、その山の頂上を目指し、ただ一生懸命のぼればいい。それが、充実した人生を過ごす秘訣なのだ」
などと哲学的な捉え方をされたりしますが、実際は彼にそんなつもりは無く言葉通りシンプルな意味だったそうです。
お、熱燗来ましたね。回してもらえますか?そこ持つと熱いですよ。気をつけて。
えー皆様、飲み物は行き届きましたでしょうか?
あらウーロンハイ?え、茶?あ、車ですか。それはそれは。
では恐縮ですが、遠慮なく、かんぱーい!
っあーー!どうもヘイマンです。
いやーうまい。やはりうまいですな。
実は昨晩は少しばかり飲みすぎまして、起きぬけには内臓機能の損害が著しく「今日は休肝日だな」などと思ってたんですよ。
そして重たい足取りで仕事に向かい、『薪活』と称して木を切っては転がし、転がしては車に積みと体を動かしておりました。
すると、どこからやって来たのか『ビ』のつくアイツがチラチラとこちらを見ているではありませんか。
ごめんな、今日は休肝日だから一緒に居てやれないんだ、ごめんな。
チェーンソーの轟音で振り払おうとしても、無心に薪を運んでみても、考えないようにしようとすればするほどアイツの体は大きくなり、汗を流すほどに愛おしく見えてきます。
据え膳食わぬはなんとやらと、誰にするわけでもない言い訳を一応並べ、結局今宵もアイツとの夜が始まるのです。
「二人じゃ盛り上がんないしさ、友達呼んでいいかな?」
アイツの友達にはロクな奴がいない。『し』のつく奴や『ワ』のつく奴、『ウ』や『ジ』や『テ』。
「今日はゆっくりやろうよ、明日も仕事だしさ」
そう言った1時間後には結局全員呼んじゃって、翌朝後悔とともに目覚めるのでした。
失礼、山の話の途中でしたね。
「そこにあるから」という理由でエベレストに挑戦できるジョージ・マロニー氏は根っからの冒険家なのでしょう。
山があろうがなかろうが家にいたい根っからの引き篭もりのワタクシにも、これくらいシンプルに情熱を注げるものはあるかと自問してみるもなかなか思いつきません。
そこにあったら、それが多少の危険や後悔を含むとしてもシンプルに求めてしまう。
そんなものがあれば、人生とやらも豊かになったりするんじゃないだろうかと思ったりします。
「ぼ、、、いる、、」
何かに呼ばれた気がして振り返ると『ビ』のつくアイツがこちらを見ていました。
「ぼくが、いるよ」
そうか、そうだった。当たり前すぎて忘れてたけど、お前がいたじゃないか。
というわけで、八ヶ岳に行って来ました。
何でかって?「そこで飲めるから」ですよ。
それではここで今宵の宴会メンバーをご紹介。
日本の山を登ったことのない旅人、シャチョー・ジュンイチロー。(写真右)
八ヶ岳という名前の山がないことを初めて知ったアウトドア素人、ヘイマン。(写真裏)
そんな二人を案内してくれるのは、数々の山を歩き回りアドベンチャーレースにも出場する二人。
新宿のクレイジー助産師ミヨコ(写真左)と、悩めるイケメン、ワタシ・コウ。(写真中央)
目指すは日本最高所野天風呂を誇る『湯元本沢温泉』
魔法のカードでほぼ一式道具を揃え、毎度お馴染みのYouTubeでのイメトレを済ませて伊豆を発ったのは12月1日。
ミヨコとコウを途中でピックして、90年代Jポップが軽快に響く車に揺られて買い出しへ。
足りなければ小屋で買えばいいを合言葉に買い物を済ませて登山口の稲子湯温泉に向かいました。
予行演習の甲斐あってスムーズに登山靴に履き替え、入山届に記入していざ出発。
雪解け水の滴る単調な道を抜けだんだん道が狭くなる頃、辺りはすっかり雪景色でした。
雪とは無縁な伊豆の民はすでにテンション上がり気味。
池が凍っていることにもいちいち感動する伊豆の民と、別にもういいから早く進みたい二人。
終始雪景色を楽しみながら、予定通り3時間ほどで会場である『本沢温泉』に到着。
日本最高所野天風呂はこんな感じ。開放感しかありませんでした。
辺りはすでに暗くなっていたので野天風呂は諦め、敷地内の『石楠花風呂』なる温泉に冷えた体を温めに。
お湯の色は茶褐色、温度は体が冷えていることを差し引いてもメチャアツでした。
とりあえずのビールで喉を潤し、夕食のおでんをアテにもう1本。
エンジンも温まったところでメインイベントの宴会スタートです。
宴は誠に盛り上がり、気づけば消灯時間の20時を迎えようとしていました。
心もとなくなってきたお酒を追加しようと売店に行くもすでに真っ暗。
時間差で電気が消え、ランタンが灯る部屋に戻りました。
そしてジュンイチロー持参の、度数・携帯性ともに高水準だと太鼓判のウイスキーをみんなで舐めました。
残り僅かなウイスキーを糸のように注いで分け合いました。
気がつけば、近況報告から始まった会話は精子の運動量の話にまで及び、顕微鏡があれば見てあげるとミヨコが言えばヘイマンが早速Amazonのカートに入れ、ワタシが運ぶと名乗りを上げたコウを見てジュンイチローがケタケタと笑っているくらいには酔っ払ったのでお開きに。
驚くほどすっきり目覚めた翌朝、外に出ると幻想的な朝焼けが広がっていました。最高でした。
朝食後、一同アイゼンを装着して当初の予定通り天狗岳へ進行を開始。
朝日を浴びた山に心を奪われながら歩みを進めました。
眼前に天狗岳がそびえテンションも最高潮、あとは弓なりに下って登ればゴールでした。
しかしながらこの『コル』と呼ばれる、山と山のピーク間の低所は風が強く注意が必要。
ここも例に漏れず爆風が吹き荒れていました。
何かに捕まっていないと立つこともままならない強風の中、引き返す事を決断するのに時間はかかりませんでした。
戻りながらも悔しさや無念感など微塵も感じず、むしろあんな強風を体験できたという嬉しさでいっぱいでした。
そして特に何事もなく車まで戻り、ラーメン食べて二人を駅まで送り届けて帰路につきました。
帰りの車内でふと思いました。
会場までみんなで歩いて、道中の出来事を笑いながら盃を交わす、
たったこれだけの事なのに何であんなに楽しかったんだろう。
静けさ、気温、高度、どれも一歩間違えば生命を脅かすほどシリアスな場面に、慣れ親しんだアイツがいる安心感、というかギャップというか。
背徳感という隠し味で更に匂い立つ甘美なる琥珀色のアイツの美しさというか。
ギリギリの物資を分け合うことで生まれる結束感というか。
なんというか、なんて言うんでしょう、山で飲むの楽しかったです。
そう、シンプルに山で飲むの最高でした。
今ならあのジョージ・マロニー氏のように、
『そこにあるから』
と胸を張って答えることができます。あるのは酒ですが。
そして山は伊豆にもあります。
ワタクシにとっての伊豆の山は『職場』であり、どこか味気ないものでした。
そんな伊豆の山も、宴会会場としてみれば俄然輝いて見え、素晴らしいポテンシャルを秘めているように感じます。
伊豆半島ならではのアクセスの良さ、海が一望できる景観の良さ、そのまま寝落ちしてしまってもギリ死なない程度の温暖さ。
どれをとってもピカイチだと思います。
好きな酒とつまみを持ち寄って、焚き火を囲みながら宴会してみたいです。
いや、しましょう!
山を肴に!Let’s Hike and Drunk!
早速イベントを企画しますので、開催の際には皆様奮ってご参加ください!
何の生産性も、有意義な情報もない駄文散文失礼しました。
でも飲み会ってそんなもんですよね笑
明日も早いので今日はこの辺で。
気をつけてお帰りください。
それではまた。
カシュッ。
この記事を書いた人
マウンテンバイクガイド/イラストレーター
松崎町生まれの純血伊豆ローカル。インドア派で頑なに心と身体を閉ざしていたころとは打って変わり、現在は山を切り開いてトレイルを作り、マウンテンバイクのガイドとして西伊豆の山中を駆け回る日々を過ごしているシャチク。一方で『彫刻家のじっちゃん』の名にかけて、イラスト・グラフィック等の小手先に本領を発揮中。几帳面な性格を活かし、代表の松本に足りない部分を補っていると《自負》している。